男と女のカブレ節

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 ※今日の日記は、小説「火花」などのネタバレが入っていますので、ご注意下さい。なお、感想などは私の主観ですゆえ、そちらもあしからず。

 何という偶然なのだろう。今年の正月前後に読むものを探してた時、たまたま「小説新潮」に押切もえ、「文学界」に又吉直樹のデビュー小説が載ると知って、両者とも私のイメージは「太宰カブレ」ゆえ面白そうだし、他にも色々短編が読めて合計2000円以内だし、ってんで2冊買って読み比べていたのだ。

 そうしたら、すぐに文学界が売り切れて初めて増刷だの又吉の「火花」が急きょ単行本化だの、三島由紀夫賞ノミネート、そして先日の芥川賞受賞…ってなって、私とは直接関係ないとはいえ、本当にビックリの連続だった。逆にもえの方はタイミングも悪かったのか全く話題にならずに、ちょっと気の毒だったけど。

 で、読み比べはどうだったのかというと、もえの「抱擁とハンカチーフ」、又吉の「火花」ともに先入観があったせいかベースにじめっとした暗さがあって、そこから前者は親子関係、後者は師弟関係が絡みつつなんとなくいい方向へ動いて行くかのように終わる…という部分で、ちょっと似てるかな、とは思った。でも、もえの方がやはり人物とかストーリーがいまいち書けてなくて、急に新登場人物が出て来る唐突さなんかも気になってしまったかな。読後も「あ、そう」で終わってしまった。

 話題の「火花」については、文章の運びは上手いしどんどん読めるんだけど、神谷がなんでそこまで徳永を惹き付けるのか、どこがすごいのかがもう一つ分かりにくかった。あと、途中でごそっと出て来る「モノローグ」や「お笑い論」みたいのが急に壁のように立ちふさがり、それが何度かあったのが気になってしまった。こういう小説ってけっこうあると思うけど、私はどちらかというとストーリーを淡々と追う流れの方が好きだから、全体としては読みにくかった方かな。以前又吉のエッセイを読んで、すごく面白かった記憶があったんだけど、長い創作文になると違うんでしょうかね。

 それから、最後がまた唐突で予期せぬ神谷の「豊胸」にビックリする。でもこれって勝手に解釈すると、少し前にあった「神谷が徳永の銀髪をまね、それを指摘されて自分で切ってしまった」という部分が伏線になっていて、絶対的に徳永がやらないやれないことをやって、笑わせてやる! みたいな、悲しい意地のようなものを感じてしまった。にしても、ちょっとブッ飛び過ぎてる気はするけど(笑)。

 最後はどうやら、これから二人が組んで漫才を始めて行くような終わり方なので、続編も充分出来そう。やっぱ今は完全に「時の人」だから、次回作が注目されて気の毒だけど、続編でもいいんじゃないかと思う。あるいは、徳永が書いた神谷の「伝記」という形の小説とか(伝記の必然性も、最後までよく分からなかったから…)。まぁ何であれ、次も読みますけど。

 ちなみに、芥川賞受賞作ってそんなに沢山読んでないけど、最近たまたま読んで面白かったのは西村堅太の「苦役列車」ですかね(逆に、あまりにつまらなくてボーゼンとしたのは『パー●・ラ●フ』・笑)。最初から最後まで目を離すことなく一心に読んでしまった、それくらい奇妙で人間の深層を突いてて汚くて面白かった。書評を石原慎太郎が書いてて、そういえば「太陽の季節」にも通じる人間の書き方かも(苦役列車は私小説だけど)、なんて思ったりした。

 最近は読みたい本が多くてドサドサ買ったりもらったりして、ちょっと積ん読気味になっている…。また面白い本とかあれば、適当に紹介するかもしれません。
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