内田健三先生について

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 内田健三、という人の名前を初めて知ったのは、浪人の頃「朝日ジャーナル」で論文を読んだ時だった。確か衆議院の定数是正についてだったと思うが、様々な例え(横並びだけでなく、ご自分の取材経験などを交えた)を用いたその内容は、まだ選挙権を持っていなかったアタシにもよく解るようなもので、強く印象に残っていた。

 大学は内田先生が講義を持っている法政に決まったが、特に先生を慕っていたとかではなく全くの偶然だった。1年生の選択授業では、もちろん先生の「政治過程論」を選び、毎回楽しみに出席していた。自民党と社会党が結成された1955年体制から、日本の保守政治がどのように移り変わって来たかについて、政治記者だったご自分の体験を交えながら時には冷静に、時には激しい状況を再現するかのように、その講義内容は本当に面白かったのだ。

 四年制大学のほとんどは3年生から演習(ゼミ)が開始すると思うが、法政はちょっと変わっていて2年生から3年生までゼミを取るようになっていた。アタシは迷わず内田ゼミに申し込み、気合いと猛烈アピールで合格することができた。

 ゼミは2~3年生を合わせても20人足らずの小所帯で、最初は内田先生の話を沢山聞ける! ということを喜んでいたものの、いざ始まってみるとゼミのテーマや進行はほとんど学生が自主的に決めて行く…というもので、先生はあくまでもそれに対してアドバイス的な発言をする程度。ちょっとアテが外れたなぁ…と思っていた。

 しかしその方針は、後になるにつれて自分たちで考えたり進めて行くことの大切さを育んでくれたのだな、と解って来たし、結果的にゼミ生同士の結束も非常に強くなり、特にアタシの代は奇妙なほど今でも仲がいい。

 授業以外でも毎週ゼミ生は飲み会があったし、先生も時々来られてカラオケで十八番の「青い背広で」を歌ったりしていた。アタシはお調子者なので、歌に合わせて適当に踊ったりしてそれを見た先生が「カッ、カッ、カッ!」とよく笑っていた。

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 ゼミ生はマスコミ関係を志望する者も多かったのだが、アタシが地方紙の筆記を通って面接へ行く、ということがたまたま先生に知れてしまい、「神保君、●●新聞の面接担当は誰だい?」などと尋ねて来たことがあった。アタシは青臭いところがあってコネとか口きき頼りみたいなことは絶対したくなかったので(そういうのを目当てにする人もいたかもしれないけど)、つっけんどんな位かなりうやむやにしてしまった。今思えばもしかしたら、先生はガッカリしたかもしれない…。ごめんなさい。

 1989年に卒業(やっと!)してからも、内田ゼミでは毎年のようにOB会などを開き、先生にお会いする機会も多かった。7月28日、先生の誕生日には有志が集まって誕生パーティーまで開いたこともある。94年に初めて書いたパチンコ図鑑を送った時は、次に会った時「よう、パチンコ博士か!」なんて言いながら笑っていた。

 驚くべきことに内田先生は、92年頃から東海大学の教授になった後も、10年以上法政の学生対象に「自主ゼミ」を行っていた。ゼミ生には単位もつかないし、先生には1円の報酬もない。しかし、先生の元で勉強したいという学生の熱意と先生の指導にかける思いが、奇跡的なゼミ活動を生んでいたのだった。

 最後に先生にお会いしたのは、多分2枚目の写真、2004年7月のOB会だったと思う。すでに80歳を超えているというのに、揚げ物のおつまみをモリモリ食べてお酒を飲み、大きな声で笑ったり本当に元気そのもの、だった。

 その後、OB会の招集もなくなりゼミの友人に会う度に「先生、元気かな」などという話題が必ず出るようになっていた。07年に宮澤元首相が亡くなって、最もコメントを求められるべき内田先生をTVや新聞で見なかった時、いよいよこれはおかしいぞ。と思った。一応「パチンコ年代記」も贈ったのだが…手に取ってもらえたのだろうか。なんてことも、少し気になっていた。

 それだけに、今年3月に出席したゼミの友人の結婚式で、内田先生からの祝電が読み上げられた時、思わず「おおーっ!」なんて声を挙げてしまうくらい、アタシもみんなも安堵していたのだけれど。


 そんな感じで、しばらくお会いしていなかったからだろうか、昨日先生の訃報を聞いた時も、全くピンと来なかった。我ながら今日貼付けた写真を見ると、社会人になっても先生の前にいるとアタシは全く、お調子者の学生にもどってしまう。そんなアタシを含め、沢山のゼミ生をやさしく見守ってくれていた先生が、死んでしまったなんて信じられるだろうか。

 今はただ、事実を事実と認識するのがやっと。そうして、泣くしかないのです。
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